宗教弾圧

この物語の書かれた時代の特徴として、中国の密教弾圧があります。
インドから伝えられた仏教は、中国において秘儀体系が完成され、当時の為政者をひどく恐れさせました。
そのため唐朝末期に弾圧が始まり唐武宗(とうぶそう)によって寺が焼かれ、僧は殺されました。

その後、後周の世宗と北宋の徽宗(きそう)との密教弾圧があり、難を逃れた人たちは在家居士(ざいけこじ)として ひっそり密教の法灯を後世に残し伝えました。その当時書かれた西遊記は、南華密教の秘儀についての比喩である可能性が高いといえます。

南華密教とは中国の江南地帯の在家居士に広まった密教という意味です。

唐朝末期から清朝末期までの千何百年という期間には何度となく密教に対する迫害があり、そのたびに寺が焼かれ僧が殺され経典が灰になっており、辛亥革命のあとになってようやく法に触れずに学ぶことができるようになったそうです。

その弾圧下の中国において、千年以上の年月を数えきれない多くの人たちの命をかけた信仰によって守られた教えのエッセンスが西遊記の中にあり、このことを知らなければ、オカルト小説としても面白くないことでしょう。
また、この背景があるからこそ、西遊記という物語が素晴らしい作品となっているのだと思います。数え切れない多くの僧侶の無念の叫びや、多くの人の命をかけた信仰を、物語によって伝えています。

その主人公となるものは、孫悟空という猿です。
この猿が物語の中で大暴れする様子は、いつの時代においてもすがすがしく爽快で胸のすくようです。
それが子供向けの童話であるかぎり、さすがのお上も手を出せなかったことでしょうし、暴れん坊の猿の物語、ということで今日に至るまでの検閲の目を逃れてきたのでしょう。
その事実自体を考えても我らがヒーロー大活躍の面目躍如です。
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by polestar01 | 2005-03-02 09:34 | 時代背景
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